狂想曲
土曜日の、夜11時。
いつものように一緒に飲んでいたのに、早々に出来上がってしまった百花は、迎えに来たカレシらしき人に連れて帰られた。
だから私はひとり寂しくいつものスタンディングバーに場所を移して飲んでいた。
床からキノコが生えてるみたいな丸テーブルに寄り掛かる。
と、その時、私の携帯が着信のメロディーを響かせた。
けれど、見ると知らない番号が表示されている。
私は首を傾げながら通話ボタンを押した。
「誰?」
「俺」
「誰よ」
「俺。キョウ」
私は驚きのあまり、「え?」と声を上げてしまう。
「何で私の番号知ってるの?」
「さぁ? 何でだろ」
またはぐらかすのか。
とはいえ、キョウに対しては愚問だったなと思いながら、私は息を吐いた。
「で? 電話してきたからには何か用があったんじゃないの?」
「あ、そうそう。俺今暇してんだけど会わねぇかなぁ、と思って」
心底呆れた。
そっちの都合で暇だから会おうだなんて、勝手すぎる。
だから私は、文句のひとつでも言ってやろうと口を開くが、でもそれより先にキョウは、
「つーか、会いたいんだけど」
ギムレットが喉の奥をひりひりさせる。
乾いた笑いが漏れる。
「何それ」