狂想曲
「何あんた。カレシ?」
怪訝な顔になった男がキョウを睨む。
が、動じることなくふっと笑ったキョウは、男の眼球数センチに煙草を突き立て、
「なぁ、目玉って焼けたらどんな匂いするんだろうなぁ? 目玉焼きみたいだと思う?」
ふう、と吐き出された煙。
男はひっと顔を引き攣らせ、私から手をどけ、足を引いた。
「す、すいません! ごめんなさい!」
男は逃げていく。
私は呆れ返っていた。
キョウはそんな私を気にすることもなく笑っていた。
「何ナンパされてんの」
「別に好きでナンパされてるわけじゃないわよ」
「はいはい」
「それより早かったね。っていうか、ほんとに来るとは思わなかった」
「何で」
「もう現れないのかと思ってたから」
だけど、キョウは私の言葉に肩をすくめて見せるだけ。
そして「とりあえず出よう」とだけ言い、さっさと行ってしまう。
私はため息混じりにその後を追った。
店の外には、いつぞやと同じ、悪目立ちする黒い外車が止まっていた。
キョウに促され、私はその助手席に乗った。
キョウは私を一瞥する。
「何で怒ってんだよ」
「怒ってないよ」
「怒ってんじゃねぇかよ」
怒っているつもりなどなかった。
だけど、「怒ってないってば」と、もう一度言った私の言葉は、少し刺々しくなっていた。
「あぁ、そっか。俺と会えなかったから寂しくて不貞腐れてたってわけか」
怪訝な顔になった男がキョウを睨む。
が、動じることなくふっと笑ったキョウは、男の眼球数センチに煙草を突き立て、
「なぁ、目玉って焼けたらどんな匂いするんだろうなぁ? 目玉焼きみたいだと思う?」
ふう、と吐き出された煙。
男はひっと顔を引き攣らせ、私から手をどけ、足を引いた。
「す、すいません! ごめんなさい!」
男は逃げていく。
私は呆れ返っていた。
キョウはそんな私を気にすることもなく笑っていた。
「何ナンパされてんの」
「別に好きでナンパされてるわけじゃないわよ」
「はいはい」
「それより早かったね。っていうか、ほんとに来るとは思わなかった」
「何で」
「もう現れないのかと思ってたから」
だけど、キョウは私の言葉に肩をすくめて見せるだけ。
そして「とりあえず出よう」とだけ言い、さっさと行ってしまう。
私はため息混じりにその後を追った。
店の外には、いつぞやと同じ、悪目立ちする黒い外車が止まっていた。
キョウに促され、私はその助手席に乗った。
キョウは私を一瞥する。
「何で怒ってんだよ」
「怒ってないよ」
「怒ってんじゃねぇかよ」
怒っているつもりなどなかった。
だけど、「怒ってないってば」と、もう一度言った私の言葉は、少し刺々しくなっていた。
「あぁ、そっか。俺と会えなかったから寂しくて不貞腐れてたってわけか」