狂想曲
まるで地の果てまでの旅なのかと思うほど、その道のりは長かった。
いや、正確に言えば、無言が続き過ぎてそう思えただけなのかもしれないけれど、でも元々酔っ払っていた私には、真っ黒く続く窓の外の景色の、境界線は曖昧だった。
私の涙はとっくに乾いて消えていた。
「着いた」
キョウが車を止めてそう言ったのは、午前1時を少し過ぎた頃だった。
どこかの海浜公園みたいなところの駐車場。
でもキョウは車から降りようとはしない。
「はぁ、マジ疲れた。俺運転好きじゃねぇの」
キョウは、言いながら、「んー」と狭苦しい車内で伸びをした。
だったら何で私を連れてこんなところまで来たのか。
と、思った私の思考を、まるで読んだみたいなキョウは、
「なぁ、あっちに見える山の上に病院あんの、わかる?」
「病院?」
「あれ。あのでかいの」
目を凝らして見ると、キョウが指をさす方向には、確かに何か大きな建物があった。
でもそれが病院かどうかはわからなかった。
「あそこにさぁ、俺のおふくろがいんの」
「え?」
「入院してんの。昔から」
キョウは少し悲しそうに目を細めた。
「……病気?」
私は恐る恐る聞いた。
キョウは顎先だけを動かしてうなづく。
「心の病気って言えば聞こえはいいけど、精神疾患だよ。それも重度の。で、隔離病棟に移されたのが5年前」