狂想曲
キョウに家の近くまで送られた頃には空は群青になっていた。
夜明けまで、もう少し。
「ねぇ、今度電話していい?」
聞いたのは、私。
「あぁ。ひとりで飲むくらいなら、電話くれたら付き合ってやるから」
「ありがとう」
キョウと自ら繋がりを作るということ。
そしてキョウはそれを了承したということ。
何だかよくわからない関係の、何だかよくわからない距離が、また少し縮まって。
「じゃあな」
「うん。ばいばい」
キョウと軽くキスをして、車を降りた。
傍から見たら私たちは恋人同士みたいだなと思いながら、走り去るキョウの車を見送った。
キョウの車が見えなくなったところで、私は息をつく。
そしてあの海浜公園の車内での会話を思い出しながら、帰路を辿った。
キョウの過去、キョウと私、私の気持ち。
ぐるぐるぐるぐる、行きつく先もないことばかり。
体を売っている私と、好きな人がいるキョウが、納まるべき関係なんてあるのだろうか。
なんて、考えたところで何かが変わるわけではないのだけれど。
朝の澄んだ空気の中、吐き出した私の息は重くて淀んだものだった。