狂想曲
天真
平日の午前中、ホテルのバルコニーから下を眺める。
少し強い風が吹いて、私は目を細めた。
「こら、律。そんなに身を乗り出してちゃ、危ないよ」
バスローブを着たパパは笑いながら言った。
パパは昨日の晩から仕事でこのホテルに宿泊していたらしい。
そして出社する昼までの時間を私と過ごしたいからと、朝から呼び出された。
「だってすごく綺麗なんだもん。ここにいなきゃもったいないじゃない」
「パパはそっちにいる方がもったいないと思うよ」
腰を引き寄せられ、そのままベッドに押し倒された。
私は口を尖らせる。
「パパのエッチ」
けれども嫌味は笑って流された。
パパの唇が落ちてくる。
私は心の中で舌打ちした。
別にパパのことは嫌いじゃないし、私は望んでここにいる。
だけど、キョウのことを想わないと言えば嘘になる。
私は目を瞑り、キョウを想像した。
途端に中心から熱が生まれる。
「律はすぐに感じちゃうんだね」
私の胸の谷間に顔をうずめたパパの吐息が掛かる。
私は言葉にならないため息を漏らした。