狂想曲
パパとは、その部屋で少し早めの昼食をとって別れた。
ホテルを出たのは12時頃だった。
タクシーに乗って街まで戻ったけれど、どこもランチタイムのサラリーマンやOLで溢れていて、私はげんなりさせられた。
とりあえずひと休みしようといつものスタバに入ったのは、だからだったのかもしれない。
私は、ひとり静かに先ほどコンビニで買った雑誌を読んでいた。
それは、雑誌がメイクのページに差し掛かろうとしていた時のことだった。
「ねぇ、ここ座っていい?」
顔を上げた。
金髪の男の子がコーヒー片手に私の向かいを指差していた。
私は怪訝な顔をする。
「他に席空いてるよね? っていうか、こういうところでナンパはないんじゃない?」
それでも彼はにこにこしていた。
「律さん、でしょ?」
「え?」
「ぼくね、レオっていうんだけど。あなたのこと知ってるよ。それで、友達になりたくて。結構勇気出して今声掛けたんだけど」
わけがわからなかった。
私はこんな子なんて知らない。
レオと名乗る彼は、年下か、よくて同い年くらいだろう。
「座っていい?」
もう一度問うてきたレオと名乗る彼は、なのに私の返事を聞くこともなく向かいに勝手に腰を下ろす。
私は読んでいた雑誌を閉じた。
「あなた、誰?」
「だからレオだってば」
「じゃなくて。どうして私のこと知ってるの?」