狂想曲
「あなたのことはわかった。でも、私と友達になりたいっていうのはやっぱりよくわからないんだけど」


レオはまた小難しそうな顔で「んー」と唸りながら考え込む。

どうやら人に何かを説明するのは苦手なタイプらしい。



「ぼくね、パパからたまに律さんの話聞いてたの。それで、話を聞く度に素敵な人なんだろうなぁ、って思って。だから、話してみたいと思うじゃない」

「………」

「あ、別に恋愛感情とかじゃないよ。仲間意識っていうのかな。親近感? そういうのもあると思うんだけど」

「………」

「でね、今実際に話してみたら、律さん、ぼくが売り専ボーイだって言っても引いたりしなかったでしょ? だからぼく嬉しくて。想像通りの人だなぁ、って」

「レオは私を美化しすぎてる」


制した私にも、レオはめげない。



「別にぼくは誰のことも美化したことなんてないよ。思ったことを言っただけ。律さん、無理に汚れ役になろうとでもしてるの?」


言葉が出なかった。

レオは、純粋で、ストレートで、淀みのない目をしてるから。



「私と友達になんてなってどうするの。何の特典もないわよ。この雑誌の方がまだふろくがついてるだけマシなくらい」

「メリットがないと友達になったらダメなの?」


また私は言葉が出なくなる。

にこにこにこにこ、おひさまのような男の子。



「わかった。じゃあ、私とレオは今日から友達。で、何するの?」

「ケーキ食べに行こう」

「は?」

「ケーキ。ぼく好きなんだ。でもああいうとこって男ひとりで入ると女性のお客さんからの目が痛くて」


唐突すぎる。

それでもレオは「行こう!」と私の腕を引いた。


強引だとは思ったけれど、でも“友達”だからなのか、嫌悪感はまったく感じなかった。

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