狂想曲


移動したのはケーキバイキングのお店だった。

特に甘い物好きというわけでもない私は、こういうところは初めてだった。


きょろきょろしていたらレオに笑われた。



「いっぱい食べようね」


レオは皿に収まりきらない量のケーキを取っていた。

それを見た私はさすがにちょっと引いてしまった。



「すごいね。太るんじゃない?」

「成長期だから大丈夫。っていうか、逆にもうちょっと太りたいくらい」

「ふうん。羨ましい」


レオは細身のスキニーパンツを履いているから、余計にその細さが際立っている。

ひょろひょろっとして、折れてしまいそうな感じ。



「何言ってんのさ。律さんだって十分細いじゃない」


ちょっと嫌味だと思った。

レオはケーキのひとつをフォークでぐちゃぐちゃにして、満足そうな顔で美味しそうにそれを頬張っていた。



「ねぇ、ちょっとそれ汚いって」

「そう? ぼくはこの食べ方が一番美味しく感じるんだけど。律さん、人の目とか気にしすぎじゃない?」

「私はマナーの話をしてるのよ」

「マナーなんて考えて倫理観の中で生きてたら、ぼくは男の人の前で裸にはならないよ」


私は思わず笑ってしまった。


面白い子だと思った。

レオの魅力はそういうところで、だからパパはこの子を飼っているのだろう。



「ねぇ、お尻痛くなったりしないの?」

「最初はね、立ち上がることもできなかったけど。でも何でも慣れだね」

「ふうん。苦労してんのね」

「そう。だからそうやって頑張って稼いだお金でこうやってケーキいっぱい食べられるのを幸せだと思えるの」


私はいくらお酒を飲んでも幸せだとは思えない。

レオと私は根本的なものが違うのだろうか。
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