狂想曲
キョウは私に、中に入るようにと促した。
リビングに行って驚いた。
窓辺には私の身長より少し低い観葉植物が置かれていたから。
部屋のインテリアにさえ無頓着そうなこの人が、わざわざこんなものを買っただなんて到底思えなかった。
「それ、“幸福の木”っていうんだって」
「何それ?」
「知らない。でももらったから、枯らすわけにはいかないし」
太く伸びた幹のテッペンに、淡い緑のパイナップルの葉みたいなのが生えている。
キョウはその葉に触れた。
「俺に幸せになってほしいんだって。こんな木が俺のこと幸せにしてくれんのかよ、って感じだけど」
誰にもらったの?
なんてことは聞けなかった。
キョウは誰かを思い出したような顔でふっと笑う。
「でもまぁ、俺みたいな人間を心配してくれる人もいるんだって思うと、それなりに嬉しかったりしてさ」
「………」
「だから、そういう気持ちとかは大事にしとかねぇとバチ当たるじゃん?」
私だってキョウのことを心配しているのに。
そう思うとこの木のことが少し憎らしく見えて。
私は無視してソファに座り、ひとり缶ビールのプルタブを開けた。
「おいこら、何勝手に飲んでんの」
キョウは上から私の缶ビールをひょいと奪う。
「あっ」と声が漏れ、「もう」と怒りながら顔を上げた瞬間。
代わりとばかりにキョウの唇が降ってきた。
「あんたほんとに飲むためだけにここにきたの?」
リビングに行って驚いた。
窓辺には私の身長より少し低い観葉植物が置かれていたから。
部屋のインテリアにさえ無頓着そうなこの人が、わざわざこんなものを買っただなんて到底思えなかった。
「それ、“幸福の木”っていうんだって」
「何それ?」
「知らない。でももらったから、枯らすわけにはいかないし」
太く伸びた幹のテッペンに、淡い緑のパイナップルの葉みたいなのが生えている。
キョウはその葉に触れた。
「俺に幸せになってほしいんだって。こんな木が俺のこと幸せにしてくれんのかよ、って感じだけど」
誰にもらったの?
なんてことは聞けなかった。
キョウは誰かを思い出したような顔でふっと笑う。
「でもまぁ、俺みたいな人間を心配してくれる人もいるんだって思うと、それなりに嬉しかったりしてさ」
「………」
「だから、そういう気持ちとかは大事にしとかねぇとバチ当たるじゃん?」
私だってキョウのことを心配しているのに。
そう思うとこの木のことが少し憎らしく見えて。
私は無視してソファに座り、ひとり缶ビールのプルタブを開けた。
「おいこら、何勝手に飲んでんの」
キョウは上から私の缶ビールをひょいと奪う。
「あっ」と声が漏れ、「もう」と怒りながら顔を上げた瞬間。
代わりとばかりにキョウの唇が降ってきた。
「あんたほんとに飲むためだけにここにきたの?」