狂想曲
ひどい人だ。

見透かされてる気がして嫌になる。



「キョウが何も言わなきゃ私は黙って飲んで帰るつもりだったのに」

「俺の所為?」

「そうだよ」


今度は私がキョウを引き寄せた。


深みにはまっていく。

私の願望が奥底から顔を覗かせる。



「じゃあ、全部俺の所為にしとけ」


キョウは奪うように私の口内に舌を侵食させる。

声が漏れる。


キョウは私を見降ろした。



「俺さっき、あんたから電話掛かってきた時、すげぇ嬉しかったんだよね」


視界の隅に鎮座している、キョウが“誰か”からもらった幸福の木。



「私ね、おかしいんだよ。いっつもキョウのこと考えてるの。誰といても、何をしてても、キョウのことが頭から離れないの」

「俺もそうだよ」


セックスをするための言葉なのか、それとも本気で言ってるのか。

キョウは私の首筋をぺろりと舐め上げながら、



「あんた俺のこと好きなんだ?」


いたずらに言って、キョウの瞳が私を捉える。



「じゃあ俺と付き合う?」

「……え?」

「俺と付き合えばいいじゃん」

「……何、言って……」


でもキョウは私の次の問いを許してはくれず、唇を塞がれ、柔肌をまさぐられる。

体の中心から痺れていく。
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