狂想曲
「ちょっ、待って」

「待たないって。待てないし」

「待ってってば」


それでも言うと、キョウはやっと手を止めてくれた。

私は上擦った呼吸を整えながら、



「どうして急にそんなこと言うの?」

「何が」

「付き合うとか、キョウがそんなこと言うなんて、思ってもみなかったから」

「嫌なのかよ」

「……そうじゃない、けど」


そこで言葉は止められた。

再びキョウの手が動き出したから。


私はか細い声を漏らした。



「いいね。好きだよ、律のこと」


いたずらに言って、キョウの妖艶な瞳が落とされる。

私はそれに欲情させられる。


キョウの、手と、目が、私を犯す。



「キョウ」

「うん」

「やっ、キョウ」


私はキョウの腕の中で、簡単に果てを見る。


どうしようもない感情に支配されて。

私はそれに抗えないまま。



「律」


思考はもうどろどろに溶け切っていた。

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