狂想曲
キョウがどういうつもりで言ったのかなんてわからない。
好きな人がいると言っておきながら、私に向かって『俺と付き合えばいいじゃん』だなんて。
行為の終わり、私はソファの上で、キョウの膝の上に寝そべっていた。
「ねぇ、さっきの本気?」
「何が」
「私たちってほんとに付き合うことになったの?」
「しつこいって。何か問題でもあんの?」
好きな人がいるらしいキョウと、体を売っている私が?
と、思ったけれど、ヤッてることに変わりはないのだからと、私は諦めて息を吐いた。
キョウはそんな私の頭を撫でていた。
「いっつも中にばっかり出して、子供できたらどうすんのよ」
「いいじゃん、子供。俺の子なら大歓迎。産めよ」
私は驚きのあまり、顔を上げた。
「何言ってんの?」
「別にいいじゃん。俺らさっきから付き合ってんだし、それこそ何の問題もない」
私は呆れ果てた。
脱力するように再びキョウの膝の上に頭を落とし、
「冗談に決まってるじゃない。子供なんてできるわけないよ。私ピル飲んでるから」
「マジで? 俺今かなり本気で言ったのに」
キョウはあからさまに落胆したような顔。
そして、ため息混じりに煙草を咥える。
何を考えているのかまるでわからない人だ。
キョウを見上げた。
キョウはすっかり気の抜けた缶ビールを傾けながら、
「でもまぁ、俺あんたのことちゃんと考えてるから」