狂想曲


キョウがどういうつもりで言ったのかなんてわからない。

好きな人がいると言っておきながら、私に向かって『俺と付き合えばいいじゃん』だなんて。


行為の終わり、私はソファの上で、キョウの膝の上に寝そべっていた。



「ねぇ、さっきの本気?」

「何が」

「私たちってほんとに付き合うことになったの?」

「しつこいって。何か問題でもあんの?」


好きな人がいるらしいキョウと、体を売っている私が?

と、思ったけれど、ヤッてることに変わりはないのだからと、私は諦めて息を吐いた。


キョウはそんな私の頭を撫でていた。



「いっつも中にばっかり出して、子供できたらどうすんのよ」

「いいじゃん、子供。俺の子なら大歓迎。産めよ」


私は驚きのあまり、顔を上げた。



「何言ってんの?」

「別にいいじゃん。俺らさっきから付き合ってんだし、それこそ何の問題もない」


私は呆れ果てた。

脱力するように再びキョウの膝の上に頭を落とし、



「冗談に決まってるじゃない。子供なんてできるわけないよ。私ピル飲んでるから」

「マジで? 俺今かなり本気で言ったのに」


キョウはあからさまに落胆したような顔。

そして、ため息混じりに煙草を咥える。


何を考えているのかまるでわからない人だ。


キョウを見上げた。

キョウはすっかり気の抜けた缶ビールを傾けながら、



「でもまぁ、俺あんたのことちゃんと考えてるから」
< 86 / 270 >

この作品をシェア

pagetop