狂想曲
キョウの匂いが心地いい。



「おいおい、飲まずに寝るつもりかよ。俺寂しいじゃん」


キョウは私のおでこに軽くキスを落とす。

私はくすぐったくて笑った。


何だかほんとに恋人同士みたいだという実感が湧いてくる。



キョウは変わらず優しかった。



「私もう疲れたから眠くなっちゃった」

「マジかよ」


私はベッドまで行く気力もなく目を瞑る。

ここは相変わらず静かで、だから互いの鼓動まで漏れ聞こえてしまいそうで。


私はガラにもなくどきどきしていた。



「ねぇ、キョウ」

「んー?」

「あんまり喧嘩とかしちゃダメだよ」

「だな」


キョウはふっと笑った。

その瞳の先にある、幸福の木。


私じゃない人に笑い掛けてるみたいな顔。



「しっかし、あの木って何気に効果あんのかもな。あとで礼言っとかなきゃ」


呟いて、キョウはもう癖みたいに私の頭を撫でた。

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