狂想曲


それからは、キョウとは週に1,2回、会うようになった。

会えない時でも電話やメールはする。


特に何か話すとかじゃないけれど、でも、私はそんな他愛もないことが嬉しかった。



そしてそれは6月最後の日。



夜に電話が掛かってきて、キョウに呼び出された。

私たちは焼肉屋で肉をつつきながら乾杯した。


キョウは塩タンばかり食べていて、私はそれを笑った。



「絶対おかしいよ。塩タンばっかり、よく飽きないよね」

「馬鹿。焼肉屋で塩タン食わなくて何食うの」

「ロースとかカルビでしょ」

「若いねぇ。これだから10代の胃袋は」


キョウは鼻で笑ってビールを傾けた。

と、その時。



「キョウ?」


声に、弾かれたように顔を向けた。

20代中頃くらいの男の人が立っていた。



「おー、ビビった。トオルさんじゃん」

「お前何やってんの。可愛い女の子連れて、俺のがビビったぞ」


トオルさんと呼ばれた彼は、図々しくも、勝手にキョウの隣に割り込んで来た。

私は少し引いてしまった。



「何? カノジョ?」

「そんな感じ。でも誰にも言わないでね。律が危険な目に遭ったら俺困るから」

「ふうん。らしくないこと言いやがる」

「そんなことないでしょ」

「いや、だって俺キョウが女といるの初めて見たし。つーか、るり以外の女といて安心したっつーか」
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