狂想曲
愛されることに資格なんて必要なのだろうか。


いたいけな少年の瞳が揺れる。

私は、私と同じくらいの身長の、レオのくしゃくしゃの金髪頭を撫でた。



「見つけようとしなきゃ見つからないものもあるんだよ」


私の言葉に、レオはふっと笑みを零し、「ありがとう」と言った。



「律さんに愛される人は幸せ者だね」

「私は女神なんかじゃないよ」

「そんなのわかってる。だけど、あなたには人を幸せにできる力があるの。少なくとも、今ぼくは少し救われたよ」


レオは私のグラスに乾杯した。


私は、何だか可愛い弟ができたみたいな気持ちになった。

嬉しかった。



「レオを愛してくれる人、見つかるといいね」


レオは笑う。

少し悲しげな目をして、笑うだけ。


幼さと大人っぽさの混在する年頃の、刹那で変わりゆく不思議な色をした瞳を伏せるようにして。



「ねぇ、それよりも律さんの話を聞かせて」

「私の話って?」

「好きな人、いるんでしょ?」


身を乗り出して聞いてきたレオの顔は、いつもの屈託のない少年のような笑みに戻っていた。

だけど私はため息混じりにギムレットを流す。



「ごめんね。私まだ人に言えるほどあの人のことよく知らないから」


言ったら少し、虚しくなった。

レオは「そっか」としか返してこなかった。


何だか今日は、酔うに酔えない感じだった。

< 95 / 270 >

この作品をシェア

pagetop