狂想曲
レオと別れて帰宅したのは夜11時を過ぎた頃だった。
玄関を開けるとリビングから明かりが漏れていた。
「奏ちゃん、いるの?」
奏ちゃんが電気を消し忘れて家を出るなんてことはありえない。
だけど、リビングを見渡してみても奏ちゃんの姿はなく、私は奏ちゃんの部屋のドアをノックした。
返事はない。
「奏ちゃん?」
恐る恐るドアを開ける。
奏ちゃんは寝ているようだった。
私はほっと安堵してきびすを返そうとしたけれど、でも、ふと何か違和感を感じて足を止めた。
「……奏ちゃん?」
よくよく見てみると、そのひたいには汗の粒が。
ベッドで眠る奏ちゃんは浅く上擦った呼吸を繰り返している。
私は心臓が跳ね上がった。
「奏ちゃん、大丈夫?!」
慌ててその体を揺すると、奏ちゃんは「んー」とくぐもった声を上げて、薄目を開けた。
「律か。俺寝てた?」
「ちょっと、体熱いよ! 熱あるんじゃない?!」
「大丈夫だって。心配しないで」
いつもより気力なくかすれた声。
それでも奏ちゃんは気丈なことを言う。
私は途端に泣きそうになった。
「ごめんね、奏ちゃん。私全然気付けなかった」