狂想曲


レオと別れて帰宅したのは夜11時を過ぎた頃だった。

玄関を開けるとリビングから明かりが漏れていた。



「奏ちゃん、いるの?」


奏ちゃんが電気を消し忘れて家を出るなんてことはありえない。

だけど、リビングを見渡してみても奏ちゃんの姿はなく、私は奏ちゃんの部屋のドアをノックした。


返事はない。



「奏ちゃん?」


恐る恐るドアを開ける。


奏ちゃんは寝ているようだった。

私はほっと安堵してきびすを返そうとしたけれど、でも、ふと何か違和感を感じて足を止めた。



「……奏ちゃん?」


よくよく見てみると、そのひたいには汗の粒が。

ベッドで眠る奏ちゃんは浅く上擦った呼吸を繰り返している。


私は心臓が跳ね上がった。



「奏ちゃん、大丈夫?!」


慌ててその体を揺すると、奏ちゃんは「んー」とくぐもった声を上げて、薄目を開けた。



「律か。俺寝てた?」

「ちょっと、体熱いよ! 熱あるんじゃない?!」

「大丈夫だって。心配しないで」


いつもより気力なくかすれた声。

それでも奏ちゃんは気丈なことを言う。


私は途端に泣きそうになった。



「ごめんね、奏ちゃん。私全然気付けなかった」
< 96 / 270 >

この作品をシェア

pagetop