狂想曲
何があっても私たちは世界でたったふたりだけの兄妹で、だから助け合って生きていかなきゃいけないのに。

なのに、私は、奏ちゃんが苦しんでいたことも知らずに飲み歩いていたなんて。


何だかんだ言ったって結局は、奏ちゃんは私の大事なお兄ちゃんなのだ。



「奏ちゃん、ごめんなさい」

「俺ちょっと疲れが出ただけなのに、何で律が謝るのさ」

「だって……」


奏ちゃんは、ベッドの下にへたり込んだ私の頭を、なだめるように撫でてくれる。

私は零れ落ちる寸前だった涙を拭った。



「待ってて。今飲み物と冷やすもの持ってくるから」


私は立ち上がってリビングに向かう。

冷蔵庫の中にあったミネラルウォーターと冷却シート、そして薬箱の中にあった解熱剤を持って、急いで奏ちゃんの部屋に戻った。


奏ちゃんのおでこに冷却シートを張って、体を起こさせてミネラルウォーターと一緒に薬を飲ませて。



「大丈夫?」


奏ちゃんは私に頷いて見せた。



「病院行く?」

「ほんといいから。動くと熱上がりそうだし」


奏ちゃんは、そして再びベッドに寝転がった。

その瞳は、私を上目に捕えながら、



「ねぇ、覚えてる? 母さんがいなくなって、父さんが死んで。律、倒れたよね」

「うん」

「その時、俺ずっと律についてた。なのに今は逆になっちゃって」

「何言ってんのよ」

「ごめんね、律。俺は律にとってスーパーマンじゃなきゃダメなのに」


私はふるふると首を横に降る。



「スーパーマンだって人間だよ」
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