貴女は僕の運命の人ではありませんでした
手すりに両手を付いて、上半身を少し乗り出す智香さんが危なっかしくて、
俺は後ろから、そのまま智香さんを囲うように手すりに両手を付いた。
「...ちょっ...伊東くん?!」
突然の俺のそんな囲いに驚く智香さん・・・
「だって、智香さん、あんなに身を乗り出して危なっかしいもん。だから、こうやってガードしとくの!」
「だ、大丈夫だってば...子ども扱いしないでよね?」
振り向き気味にそう言って、フイッっとまた夜景に正面を向く。
その瞬間、智香さんの髪が俺の鼻をくすぐった。
甘い・・・智香さんの香り。
このまま後ろからギュっと抱きしめたい・・・
そう思った瞬間、智香さんがクルッと身体ごと俺の方を向きを変えた。
「......」
「......」
夜景に背を向けて、俺を見る智香さんとの距離は・・・多分・・・30cmくらい。
身長さがものすごくあるわけじゃないけど、俺より15cmは低い智香さんに見られたら、自然と上目遣いされるわけで・・・
・・・むちゃくちゃ可愛い・・・
こんな近くで智香さんを見るのが初めてだし・・・整った顔にドキドキしっぱなしだった。
「...なに?智香さん。急に振り向いて...」
「べ...別に。」
そう言うと、智香さんはまたクルっと夜景の方に向いた。
・・・アレ・・・残念。