貴女は僕の運命の人ではありませんでした
・・・二人が俺の前を通過せずに立ち止まった。
「こんにちは。山瀬です。今日は監督代行ですが宜しくお願いします。」
“山瀬さん”が帽子をとり、俺に向かってそう言った。
「こ、こちらこそ、宜しくお願いします...」
俺も帽子をとり、山瀬さんに挨拶をする。
チラっと山瀬さんの後ろを見ると、智香さんは俯いていた。
「じゃぁまた後ほど...」
「あ...はい」
山瀬さんはそのまま自分のチームの元へ向かった。
智香さんは、俺をチラっと見て、少しだけ微笑んでから山瀬さんの後を追うように行った。
すると少し先を行く山瀬さんが、智香さんに振り返り、
「あ!わりぃ!智香!俺、財布と携帯を車に忘れてきちゃったから持ってきて!」と智香さんに車の鍵を放り投げた。
「え?あ...うん、わかった」
鍵を受け取った智香さんが、また俺の前を通って駐車場に戻って行った。
・・・俺の前を通っていく時、チラっと俺を見て・・・
・・・最悪。
・・・山瀬って人、絶対智香さんの彼氏じゃん。
“智香”なんて呼び捨てにしちゃってさ・・・
浮気してんだろ?だったら彼氏面すんなよ・・・
時計をチラっとみると、まだ時間に余裕がある。
俺は、山瀬さんがチームに合流したのを確認して、智香さんの後を追った。