てっぺんまでもうすぐ
てっぺんまでもうすぐ
綿菓子みたいだった雲が薄く伸ばされ、オレンジ色に染められていく。


隣を走り抜けていく、手をつないだ幼い兄弟が起こした風も、少しばかり冷たくなったように感じた。




辺りを見回すとメリーゴーランドに明かりが灯り始めている。


かぼちゃの馬車に乗りながら手を振る小さな姉妹。


柵にもたれてそれを見守る父親。


みんなをアコーディオンの音色が優しく包んでいた。




来てからどれくらいの時間が経ったんだろう。


授業中はあれほど時計の針が進むのを遅く感じるのに、今日は、今さっき彼女に会ったばかりのような気がしていた。


あたりまえの事だが、楽しい時間はあっという間に過ぎてしまう。


「そろそろ……帰んなきゃ……ね!」


そう言いながら振り向いた彼女の声で腕時計に目を落とす。


時計の針は閉園時間近くを示していた。
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