てっぺんまでもうすぐ
外を見ると、空の藍色の比率が少なくなっている。


彼女の白いコートをオレンジ色に染めていた太陽の役目も終わりに近づいてきていた。




もうゴンドラも、だいぶ高い場所まで昇ってきている。


もうすぐ一番高い場所。


この景色をふたり占めできるのは、きっとわずかな時間だけだろう。




僕は彼女の名前を呼んだ。


彼女は声を掛けられた瞬間、僕の手をきゅっと優しく握り返し、こちらを振り向いた。




「ん?」と微笑みながら首をかしげた彼女の右頬に僕は震えている右手を当てる。


ずっと握り締めていたために血が通わず冷たく白くなった僕の手に小さく驚いた後、彼女は静かに目を閉じた。
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