Maria ~私の心を貴方に捧ぐ~
目の前には顔を白い布で覆われた誰かが横たわっている。


ここまでどうやって来たのか分からない。


歩いてきたのか走ってきたのか、それとも誰かに抱きかかえられて来たのか……。



『まりあ…お父さんの横においで』



横たわっている誰かの横に立っているお父さんに呼ばれるがまま、私は足を進めた。


頭で歩けと命令したわけじゃない…自然と足が動いた。



『開けるよ?』

「…………」



お父さんは私の手を力強く握り締め、空いているもう片方の手で白い布を捲った。


顔を見た瞬間心臓が煩くざわつき始め、血液が一気に体中に回りだした気がした。



「………おか…ぁ……さ、ん?」

『ッッあぁ………』



お父さんの手に繋がれていない方の手で、お母さんと思われる人の頬にそっと触れた。


いつもの温もりはなく、もう間もなく微かに残っている温もりさえも無くなりそうだった。





< 142 / 253 >

この作品をシェア

pagetop