Maria ~私の心を貴方に捧ぐ~
繋がれている手から伝わってくる…お父さんが震えていることが。


目の前にいる人をお母さんだとまだ認識できないでいる。


そう思いたくないし、お母さんによく似ている人だと思いたかった。


だから涙も私の目からは零れ落ちないどころか、涙が目に浮かぶこともなかった。



『脇見運転をしたトラックに…はねられて即死だったそうだ……。これを、大事に抱えていたそうだよ………』



お父さんが下に置かれていたビニール袋を拾い上げ、私に渡してくれた。


ビニール袋には血が付いていた。


袋の中のものを取り出そうとした時に、自分も震えていることに気が付いた。


震えている手で必死に袋の中のものを取り出した。


中に入っていたものを見て、私の目から涙が零れ落ちた。



「ク、マ………」



こんなクマよりお母さんの命の方がだい、じッッ大事なのに………。


こんなものの為にお母さんはッッ私のせいだ…私がお母さんを殺したッッ!!!!!!



「ぅッッあぁぁぁあぁっぁぁッッお母さんッッッッッ!!!!!!!!!」



袋に包まれていた汚れ一つ付いていないクマを胸の中できつく抱き、私はその場に泣き崩れた。





< 143 / 253 >

この作品をシェア

pagetop