Maria ~私の心を貴方に捧ぐ~
本当はまりあと出来る限り一緒にいたい。


諦めずに心臓移植が出来るのを待つと言ったが、恐怖がなくなったわけじゃない。


好きな女の存在は励みになる事もあるし、辛い思いを増幅させる事もある。


今は辛い気持ちがどんどん増幅していっている……これ以上、この醜くてどうしようもない感情を増やしたくない。



『病人が過ごしやすい環境を望むなら、周りの人間が口を出す権利はねぇだろ。お前は病人の立場もしっかり理解してくれてると思ってた』

「それ…は……で、もッッ」

『それとなく信号送ってたのに、俺がお前に気ぃ遣って来るなって言えねぇことに全然気付かねぇんだもんな。ただでさえ病気の事で苛々してんのに、これ以上苛々させんな』



本当はもう、まりあから目を逸らしたい。


どれ程まりあに酷いことを言っているか分かってる。


まさか自分がまりあを傷つける日が来るとは思わなかった。



「私ッッ邪魔って…事、だよね?」

『あぁ』

「わかッッた…京ッちゃんが、無事に…退院するまでッッ会うのは我慢、するッッ」



そう言うと、まりあはバッグを持って立ち上がった。


立ち上がったまりあの顔を見て、俺は目を疑った。


これだけ酷い事を言ったのに、俺の大好きな笑顔を向けてくれていたからだ。





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