Maria ~私の心を貴方に捧ぐ~
お袋は退院の手続きの最終確認やらタクシーの手配やらで病室を出て行ってしまった。


俺はまた堀口先生に目線を戻した。


まりあの口からよく出てきていた昴先生…こんな人が傍にいれば好きになってもしょうがねぇと思った。


まりあは堀口先生と上手くいってるから、メールの返事をくれねぇのかもしれねぇ……。



『成瀬君とは直接は面識はないんだけど、まりあちゃんからはよく話を聞いているよ』

『そう…ですか』

『僕は院長先生とは専門が違うけど、今日は無理を言って連れて来てもらったんだ』



俺の顔を見ておきたかったってことか?


この笑顔の裏は本当は笑顔じぇねぇのかもしれない。


そんな事を考えていると、病室に看護師が入ってきて織原院長に何か話をしている。


織原院長は『また近いうちにね』と言って出て行ってしまった。


本当にいつも忙しそうだ。


病室には俺と音葉と堀口先生の3人だけ。


変な感じがする。



『これを渡したかったんだ』



そう言って俺に差し出してきたのはピンクとブルーの手紙だった。





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