Maria ~私の心を貴方に捧ぐ~
堀口先生の言葉に更に泣き始めてしまった音葉。



『もっと、入院していたときのまりあの様子を聞かせてもらえますか?』

『僕に分かる範囲なら』



笑ってそう答えた堀口先生は、色んな話を聞かせてくれた。


俺の為に化粧や髪型、身だしなみを頑張っていたこと。


交通事故で亡くなったまりあの母親の話をしたこと。


いつも自分のことよりも、周りにいる人たちの事を考えていたこと。



『成瀬君は覚えていないかもしれないけど、僕たちは病院で会う以前に一度顔を合わせているんだよ』

『えっ』

『あまりにもまりあちゃんが可愛くて、ついつい声を掛けてしまったんだ。その時話をしていると待ち合わせ場所に現れたのが成瀬君だった』



思い出した俺は、驚いて堀口先生を見てしまった。



『あの時の!?』

『僕もまさかこんなかたちでまりあちゃんと成瀬君に会うことになるとは思っていなかったよ』

『……変な巡り合わせですね』

『そうだね、でも僕は君たちに出会えて良かったと思ってるよ』

『俺もそう思います。堀口先生みたいな人が、まりあの傍にいてくれて良かったです』



俺の言葉に初めて堀口先生は少し泣きそうな表情になった。


今堀口先生は医者と1人の人間としての自分の狭間で苦しんでるのかもしれない。





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