あなたにおくる唄


「返事はいつでもいいから」


帰りのHRが終わった後、
そう言い残して中田は行ってしまった。




あれは、告白だったんだよね?
なんで?なんで??なんで???
いきなりすぎでしょ。。
しかも初めて会ったのに。

初めて、会ったのに...。
すごく、優しい笑顔だった。
あんなに穏やかな顔を向けてくれる人が、今までにいた?


それにしても、なんで私の名前知ってたんだろう。
前に会ったことあるっけ?


いくら考えてもわかるはずはない。


悶々と席に座ったまま考えていると、
ひとりの女の子がやってきた。

「ねえねえ、中原さんて、
中田と知り合いなの?」


少し高めの、かわいらしい声だった。
セミロングの真っ直ぐで綺麗な髪。
パッチリ二重の目で見つめられて、
女の私でも思わずドキッとしてしまった。

「ううん、全然知らないよ?」
「そうなの?ずっと見つめあってるみたいだったから何かと思ってさ」

微笑みながら髪を耳にかけるしぐさに、
またドキッとさせられた。
「じゃあ、また明日ね!」
「...あ、うん。また明日!」
「ばいばーい!」

そう言って彼女は教室を出ていった。




かわいい~...
あんなかわいい子に話しかけられちゃったよ~


.......あっ!!

喜びに浸っていて重要なことを忘れていた。
急いで教室を出ると、彼女はまだ少し先を
歩いていた。

「ねぇっ」

呼びかけると、
驚いたように振り向いた。


落ち着いて、焦らないで、ちゃんと...


「な、...名前は...?」



キョトンとしていた彼女だったが、
やがて柔らかい笑顔で言った。

「瀬能美菜。よろしくね、かず!」



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