あなたにおくる唄
「中田!」
「中田~!」
「お前大丈夫かよ~」
「一樹おはよ~」
顔をあげると、前の方のドアに
ひとりの男子が。
“中田”は言った。
「折っちまったよ。ダセ~~」
三角巾でつるした右腕を見て、なんのことかはわかった。
それより私が驚いたのは、
彼が教室に入った途端みんなの意識が一斉に彼に集中したことだ。
―――すごい。
単純にそう思った。
たぶんムードメーカー的な人なんだろうな~
そんなことを考えているうちに、
いつの間にか“中田”は私の目の前にいた。
すでに彼の周りには男女関わらず人垣ができていて、
モテるってこういうことなんだろうな~
とか、思いを巡らせていた。
すると急に、彼がこっちを向いて驚いたような顔をしたまま見つめてきた。
な、なに!?
少し警戒しながら受け止めていた。
さっきは遠くて分らなかったけど、
この人、きれいな顔してるなー
髪はくせっ毛かな?
茶色がかってるけど地毛っぽいかも。
てか、目がくりっとしてて女の子みたいだなー
なんて思いながら、
気づいたら見とれていた。