愛を知った時
その時、



「大丈夫??」




そう言いながら手を差し伸べてくれるサラリーマンさんが居たの。




私は顔も見ずにコクリと頷いた。




私は手を取り、今度は踏まないように足元を見ながら立ち上がると、



「ありがとうございます」




と、涙目になりながら蚊の泣くような声でお礼を言った。




「怪我はない?」


「あっ、はい……多分…」


「それは良かった。浴衣が汚れちゃってるよ」


「あ…本当だ…」



そう言いながらパンパン払ってくれた。



「あっ、すみません。大丈夫なので… 」




そう言って初めてサラリーマンの顔を見上げた。



ビシッとスーツを来た背の高い人。



もう少し見上げた先には、キリッと整った顔があった。





彼は、とっても優しそうなそして澄んだ目をしてこっちを見ていた。
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