愛を知った時
着いた先は海だった。


急いでメットをはずして走り出した。


「ちょっと…香?」


「早く早く」


訳も分からず連れて行かれる。



急に視界が広がる。




「………キレイ…」




そこには水平線に沈んで行く夕日が水面を赤く染め上げていた。



赤から藍色へのグラデーション。


海面が波打つたびにゆらゆらと揺れている。




「……結花に見せたくて……俺不器用だから、何して良いか分からなくて……」




夕日のせいだろうか……





香が赤く見える。





夕日を見つめながら、恥ずかしそうに言う。





「結花が幸せな気持ちになる事とか思い浮かばなくて……こんな事しか出来なくて……ごめんな」




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