愛を知った時
俺はそんな不器用な彼女を見て、昔の自分を見ているような気分になった。




気が付いたら俺は彼女に手を差し伸べていた。

これ以上見てられなかったんだろう。



「大丈夫??」



彼女は俯いたままコクリと頷いた。

彼女は手を取り、しっかりと足元を見ながら立ち上がった。


そして泣き出しそうなのを堪えながら



「ありがとうございます」



そうお礼を言った。



きっと慣れない浴衣でバランスを崩したんだろう。



可哀想に。。。




膝を付いていたから


「怪我はない?」と声をかけた。


「あっ、はい……多分…」


「それは良かった。浴衣が汚れちゃってるよ」

「あ…本当だ…」



俺は軽くはらってあげた。



「あっ、すみません。大丈夫なので…」

「本当に怪我が無くて良かったよ」



そう言った俺に、彼女は初めて顔を上げた。
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