愛を知った時
「そういえば、結婚するんやってな。おめでとう」

いきなりの事で少し咽そうになった。

「矢田さん、情報早いよ!!」

「当たり前やん、情報の矢田やで」


そう言って笑った。


大阪に人は楽しませるのが上手いな。


『それでは、今回課長に就任された広瀬様に、ひと言お言葉と乾杯の音頭を頂きます』


『それでは広瀬様、舞台上にどうぞ』


香が舞台上に上がっていく。


しっかりとした口調で、言葉を述べているんだ。



こんなのいつ練習してたんだろう……



香には本当にびっくりさせられるな。


『この度、私が課長に就任できたのも、本社および大阪支社の上司ならびに仲間達のサポートが有ったからこそであります。心から感謝を申し上げます』


そう言って深々と頭を下げた。


一斉に拍手が沸き起こる。


私もお皿を置いて拍手した。




少し間を置いてから、咳払いをしてから再び話し始めた。




『皆様にご報告をしなくてはならないことが有ります。


私が怪我をした時も、仕事に精進している時も陰で支えてくれた方が居ます。

彼女が、献身的に尽くしてくれたおかげでここまで来ることが出来ました。


……私事ですが、今年10月に樋口結花さんと結婚する事が決まりました。

 せっかく頂きましたこの場を借りて、皆様にご報告をさせて頂きます。』




「あいつ、やりよったわ」



そう、隣で矢田さんが呟いた。


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