愛を知った時

矢田さんと俺は、行き着けの居酒屋に行った。


俺は何にも食べてないから、腹が減って死にそうだった。



「広瀬、本当にやるとは思わなかったわ」



俺は焼き鳥を食べながら



「そうですか?俺、頑固ですから」



「お前の人徳やな」



矢田さんは遠くを見つめていた。



「運が良いだけですよ。それより、結花のフォローありがとうございました。」



「なんかしたか?」



矢田さんの、そんな所が好きだった。


俺は少し笑いながら



「……いえ、何でもありません。」


と、言った。



「俺はお前が羨ましいわ」



突拍子も無い、矢田さんの言葉……




「何でですか?!」




「どうしてもや。理由なんかない」





矢田さんは笑いながら答えた。




俺も、何だかつられて笑った。



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