雪解けの頃に
『余計な心配をかけまいと親にすら弱音をはかない息子でしたから、きっと理花さんには何も言わなかったことでしょう。
 
 その事であなたが気に病むことはありませんよ。

 むしろ、そばで様子を見ていたのに雄一の変化に気付いてあげられなかった私たち親のほうに責任があるのですから。

 こちらこそ、理花さんに頭を下げなければなりません。

 本当にごめんなさいね』



「く、うぅぅ……」

 理花は泣き出してしまいたいのを奥歯でグッとこらえて、手紙を読み進める。



『秋の治療では期間を過ぎても退院できる状態にはなく、そのまま病院での生活を続けることになったのです。

 予想外に早い病気の進行と化学療法で、雄一はすっかり痩せてしまいました。


 それでも必ず治ると信じて、前向きに生きていたんです。

 万が一のことも考えて外出は出来ませんでしたが、病院内での雄一は今までとさほど変わらずに過ごしていました。

 でも、どんな時でも自分の体調を気にかけ続ける生活は、きっと雄一にとって苦痛であったと思います。


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