雪解けの頃に
「まったく、何言ってんのよ。

 はぁ。こんな調子じゃ、さすがにあなたにめっぽう甘い雄一さんでも愛想を尽かすわよ。

 もう少し、おしとやかになることね。

 雄一さんに見放されても知らないから」

 母親は『最後の切り札』とも言えるセリフを理花に突きつける。


 しかし、当の本人はこの程度の言葉で反省するほど、可愛らしい心臓の持ち主ではなかった……。

 
 傷ついた素振りなど、微塵も感じさせない。


「おあいにく様ですぅ。

 雄一はそんな心の狭い男じゃありません~。

 それはもう優しくって優しくって、、私を丸ごと愛してくれているんですからね」
  
 けろりとした表情で言ってのけた後、理花は母親に向かってべぇっと舌を出した。



「もう、この子ったら……」
  
 口の減らない娘に対し、もはや反論する気力がない。


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