雪解けの頃に
「ありがとう。

 お茶はほうじ茶でいいの?」

 包みを受け取った母親は理花に尋ねる。


「うん。じゃ、その前に着替えてくるね」

 軽やかな足取りでタタタッと階段を上る―――理花の部屋は2階なのである。


「お茶を入れておくから、すぐにいらっしゃい」

 そう言って母親は台所に向かった。

 

 しかし、何かを思い出し、急に立ち止まる。


「ああ、そうそう。

 理花、ちょっと待って」
 
 すでに5段ほど上った娘の背中に呼びかけた。






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