自分は、泣いていた。
しかし、この水道口の蛇口を捻り
頭から水を被った。

全てを水に流していた。

その日から…。

ただ、あの不安定な日々から脱却を図るためだけの
偽りの逃げ道。

川田は、小走りに水道口まで行く。

「お止めなさい」
住職は力強く言った。

「やっぱり、あなたも覚えていてくだすった!」

「え?」

桶を取りに、また住職の元へ行き
水を入れる。
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