戦場派遣
太陽が昇り、あたりも明るくなってきた。

結局、杉山は一睡もできずにうずくまっていた。


迷彩の男が杉山に近づいた。

「その顔をみると、あれから一睡もできていないようだな。」

杉山は男の声にも反応せず、下を向いたままだった。

「おい。出発するぞ。」

そう言われても杉山は動かなかった。


「そうか。なら好きにしろ。本部にくるなら北北西。海に出て救助を求めるなら南東だ。」

そう言うと男は、方位磁石とサバイバルナイフを杉山の足元に置き、森の奥へと消えていった。


木々の隙間から差し込む太陽の光、
森の中をすり抜けるように吹く緑の匂いのする風、
足元には名前もしらない花が咲いており、
戦場にいるということを忘れさせてくれた。



しかし、そんな空気が一気に引き裂かれた。


10メートルくらい先の草がガサガサと動いたのに気づいた。



草と草の間から鋭い目付きの狼が杉山を睨みつけていた。
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