天体観測
言ってから、しまったと思ったが、もう何もかもが遅かった。恵美の目に涙がたまりその刹那一気に溢れだした。「なんなんよ」とひどい泣き声で、恵美が言った。
「司に何がわかんのよ。大切な肉親が死にそうな人の気持ちなんてわからんやろ。もうすぐ死にますって言われた人の気持ちと残される人の気持ちなんて考えてへんやろ。司はやっぱり冷たいよ……私のこととか、考えてくれてるふりして、何も考えてくれてない……全部自分のためやんか」
僕は何も言い返すことが出来ず、恵美は三分もしない内に、家に来たときのように、Tシャツを涙でびしょびしょにして、何も言わずに僕の家から出ていった。
僕はまた一人になった。もう何回流れているかもわからない『little by little』を止めて、まだ恵美の温もりが残るソファに寝転がる。
目を閉じると雨の激しさがよくわかる。気が立っているはずなのに、自然と眠たくなってくる。それでも僕はそれを拒絶して、ただ目の前の現実を受けとめようと必死でもがいてみた。
でも、何もかもがもう遅い。隆弘は今死んでもおかしくない。僕らの警察ごっこも実質的に終わりを向かえるだろう。それは、僕らの関係にも終わりを告げるのだろうか。いや、それに終わりを告げたのは、僕自身だ。僕は本当に何もわかっていないのかもしれない。わかっているふりをして、優等生ぶっていたのかもしれない。それが、どんな結末を引き起こすかも考えずに。
何もかもが終わった。
「司に何がわかんのよ。大切な肉親が死にそうな人の気持ちなんてわからんやろ。もうすぐ死にますって言われた人の気持ちと残される人の気持ちなんて考えてへんやろ。司はやっぱり冷たいよ……私のこととか、考えてくれてるふりして、何も考えてくれてない……全部自分のためやんか」
僕は何も言い返すことが出来ず、恵美は三分もしない内に、家に来たときのように、Tシャツを涙でびしょびしょにして、何も言わずに僕の家から出ていった。
僕はまた一人になった。もう何回流れているかもわからない『little by little』を止めて、まだ恵美の温もりが残るソファに寝転がる。
目を閉じると雨の激しさがよくわかる。気が立っているはずなのに、自然と眠たくなってくる。それでも僕はそれを拒絶して、ただ目の前の現実を受けとめようと必死でもがいてみた。
でも、何もかもがもう遅い。隆弘は今死んでもおかしくない。僕らの警察ごっこも実質的に終わりを向かえるだろう。それは、僕らの関係にも終わりを告げるのだろうか。いや、それに終わりを告げたのは、僕自身だ。僕は本当に何もわかっていないのかもしれない。わかっているふりをして、優等生ぶっていたのかもしれない。それが、どんな結末を引き起こすかも考えずに。
何もかもが終わった。