天体観測
第三次世界大戦でも勃発して、近代技術のすべてが葬り去られ、人類すらも死に絶えて何千年か後の世界。大気中の二酸化炭素濃度はきっと温暖化を引き起こさない程度だろう。オゾンホールだってきっとない。

僕はそこに立っている。


「ああ、またここか……」と、僕は呟いた。

世界の終焉を目の当たりにしても、たいした驚きはなかった。夢だとわかっていたからだけじゃない。今の世界が歩んでいる道の終着点がここなんだ。素直にそう思った。まだ地球が消滅してないだけマシだ。

僕は荒地にポツンとある背もたれのない丸椅子に座る。直にあいつが現れる。僕は地平線を見ながら、あいつを待った。夢の中でも、誰かを待つということは僕をやきもきさせた。一分でも、一秒でも早く、現れてほしかった。

「こんばんは。司さん」

隆弘は瞬きをしている間に、現れた。数秒前まで、そこには誰もいなかった。何もなかった。けれど、僕がした一回の瞬きの間に、隆弘は現れて、笑いながら立っていた。

「あんまり恵美を泣かさんといてくださいよ」と、笑いながら隆弘は言う。

「ああ」

「任せろって言ってくれたやないですか」

「ああ」

「俺、司さんは何だかんだ言っても恵美の一番の理解者やと思ってたのに」

「意外だったか?俺があんなこと言うなんて」

「意外というか、ショックでしたよ」

「俺もだよ」

隆弘は茶化すように口笛を吹いて、僕の肩に手を置いた。
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