天体観測
雨が心なしか弱まった気がする。雷もまた轟いたけれどここからは遠い。僕は濡れた髪を掻き上げる。

「当事者ほったらかして、第三者の二人で盛り上がって、それって間違ってないですかね?」

「お前にはこういう形でしか会えないじゃないか。相談のしようもない」

「そういうんじゃなくて、俺のことも考えてくださいってことですよ」

「考えてる」

「そうですか?それって結局、結果的に俺の弔いになるだけで、内容は何も伴ってなくないですか?」

僕は返事が出来ない。しないのではなく出来ない。

「図星……ってやつですか」

観念したように「ああ」と、僕は低い声で言う。

「降参だ。まさにその通りだよ。俺は隆弘のことなんて、視野にもいれていなかった」

急に隆弘が僕の前に現れる。その表情は実に満足気で勝ち誇っている。

「でしょう?」と、言う声には怒りも悲しみもない。あるのは驚嘆に似た喜びだけだ。

「怒ってないのか?」

「当たり前やないですか」

「どうして?」

「怒っても仕方がないでしょう」

「そうか」

「はい」

「なあ」

「はい?」

「俺に、どうしてほしい」
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