天体観測
「きれいだ」
「ですね」
「なあ」
「はい」
「お前は、もうすぐ死ぬんだな」
「いいえ」
「え?」と言った僕は相当間抜けな顔をしていたに違いない。隆弘は笑って、言った。
「もう、遅いです」
「それって……」
「俺はもう、死にました」
動揺で息が出来なくなる。けれど虹のドームは相変わらずきれいで空は蒼い。僕はすでにこのことを本能的に悟っていたのかもしれない。それほど、空は気分が悪くなるくらいに蒼いのだ。
「いつだ?」と、擦れた声で僕は言った。
「司さんと恵美が言い争ってる最中です」
「そうか。恵美が悲しむな」
「大丈夫ですよ。司さんがいますから」
「俺に、お前の代わりが出来るかな?」
「もう、俺なんか足元にも及ばん位置にいますよ」
「なあ」
「はい」
「もう一度、言いたいことがあるんだ」
「何ですか?どうぞ」
「今度こそ誓うよ。恵美ことは、俺に任せてくれ。だから化けて出たりするな。すぐにそっちに行ってやる」
隆弘が恥ずかしそうに笑ったのと同時に、僕は覚醒した。
時計を見ると、すでに九時を指している。僕はソファから起き上がって、お湯を沸かしはじめた。
隆弘が言ったことが正しいならば直に電話が鳴るだろう。僕はそのときが来るまで、濃いめのホットコーヒーを持って、立ったまま、庭を眺めた。
「ですね」
「なあ」
「はい」
「お前は、もうすぐ死ぬんだな」
「いいえ」
「え?」と言った僕は相当間抜けな顔をしていたに違いない。隆弘は笑って、言った。
「もう、遅いです」
「それって……」
「俺はもう、死にました」
動揺で息が出来なくなる。けれど虹のドームは相変わらずきれいで空は蒼い。僕はすでにこのことを本能的に悟っていたのかもしれない。それほど、空は気分が悪くなるくらいに蒼いのだ。
「いつだ?」と、擦れた声で僕は言った。
「司さんと恵美が言い争ってる最中です」
「そうか。恵美が悲しむな」
「大丈夫ですよ。司さんがいますから」
「俺に、お前の代わりが出来るかな?」
「もう、俺なんか足元にも及ばん位置にいますよ」
「なあ」
「はい」
「もう一度、言いたいことがあるんだ」
「何ですか?どうぞ」
「今度こそ誓うよ。恵美ことは、俺に任せてくれ。だから化けて出たりするな。すぐにそっちに行ってやる」
隆弘が恥ずかしそうに笑ったのと同時に、僕は覚醒した。
時計を見ると、すでに九時を指している。僕はソファから起き上がって、お湯を沸かしはじめた。
隆弘が言ったことが正しいならば直に電話が鳴るだろう。僕はそのときが来るまで、濃いめのホットコーヒーを持って、立ったまま、庭を眺めた。