天体観測
レガシィワールド
隆弘の葬儀は、あっという間に終わった。

四日間降り続いた雨が嘘のような炎天下の中、喪服を着た何十人という人たちが、巣穴に戻る蟻のように並んで、駅に向かって歩いていた。

参列者の中で、僕が知っていたのは父さんと母さん、国修高校の校長と、恵美と隆弘の担任、それと父親を連れた村岡と両親を連れた雨宮だけだった。もっと注意深く観察していたならば、マスターくらいなら見つけられたかもしれないけれど、僕はそうはせずに運び出された棺の跡に座っている。

やはり、人が死ぬということは、例え、予めわかっていたことでもつらい。泣きはしない、叫びもしない。けれど、そこにある悲しみの本質はどんなことがあっても変わることがない。

恵美は式の間、ずっと俯いたままだった。

憐れみもない。慰めもない。「惜しい人を亡くしました」という社交辞令のような会話もない。殺伐とした時間だった。

話したくないわけじゃない。むしろ話さなくてはいけないことがある。でも、僕は何も言えなかった。タイミングが悪いとか、気まずいとか、そういう問題じゃない。ただ、僕にはわかっていた。そういうことなんだ。

「帰るぞ。司」

気が付けば、顔色が悪く、今にも倒れそうな父さんが僕の前に立っていた。

僕は黙って立ち上がる。そして言った。

「その前に聞きたいことがあるんだ」
< 123 / 206 >

この作品をシェア

pagetop