天体観測
「私利私欲で扱っていい物事じゃないと言ってるんだ」

「父さん、教えてくれ」

「ダメだ」

「何故?それほど頑なに拒む理由は何なの?」

「俺は医者だ。それ以上でも以下でもない。だから患者のためにならないことはしない」

「本当に?」

「ああ」

僕はミネラルウォーターを口に含んで、考える。ここで引き下がるわけにはいかない。だから僕は、いつかのように、攻めてみることにした。

「もしかして、医者だから言わないんじゃなくて、言えない理由があるんじゃないの?」

父さんの体が一瞬、強張った。僕はそれを見逃さず、たたみかける。

「マスターが言ってたように、裏があるのかな?」

「いい加減にしろ」と言った父さんの声は明らかに動揺を隠し切れていない。僕はニヒルな笑みを浮かべて言う。

「警察?政治家?芸能人?それとも、同僚かな?あっ、芸能人なら隠す必要がないね。つまり警察か政治家か医者のどれかだ」

「本当に怒るぞ」

「怒られるぐらいで止めるんだったら、もっと前に止めてるさ」

「それでも怒るぞ」

「言ってくれるのなら好きに怒ってくれていい」

僕が言い終わるのと同時に、父さんは僕の頬を拳で殴りつけた。
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