天体観測
僕は殴られた頬を左手で擦りながら言う。

「図星……かな?」

「まだ言うのか」

「まだまだ言うよ」

「遊びじゃないんだぞ」

「そんなのわかってる」

「お前には何の得もないんだぞ?あるのは危険だけだ」

「承知の上さ」

父さんは煙草を灰皿に押し付けて、少し黙った後、言った。

「何がお前にそうさせるんだ?俺にはわからないな。お前があの姉弟をどう思ってるのかは知らんが、しょせん他人だろう?」

僕はこの戦いに終止符をうつべく、止めの一言を放つ。

「父さんが隆弘を看てるとき、そんなことを思ったりしなかったはずだよ。それと同じさ。それにさっきも言ったけど、これは僕自身のためにやるんだ。恵美も隆弘も関係ない」

「お前の気が済まないということか」

「簡単に言ったらね」

「でもお前は嘘をついてるな」

「ついてないよ」

「隆弘くんはともかく、少なくとも恵美ちゃんのためでないわけがない。結果的に自分自身のためであったとしても、過程に恵美ちゃんの存在がないわけがない。違うか?」

「気持ち的にはそうかもしれない」

「なら最初からそう言え」

「父さん」

「なんだ」

「教えてくれるね?」

「ああ。その代わりに約束しろ」

「いいよ」

「無茶だけはするな」

僕は力強く頷く。道は開けた。後は道しるべと、終着点を見つけるだけだ。
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