天体観測
車の中は、蒸し暑かった。もう日が暮れようとしているのに、この暑さは何だろうか。
僕はエンジンをかけて、クーラーを最大出力でかける。そしてリクライニングを倒して、天井を見る。
『ヨーイドンのピストルはまだ鳴っていない』と、神目薫は言った。でも、それは間違っている。鳴ったんだ。空一面に広がる雨雲に向かって、それは鳴らされた。隆弘が死んだとき。たしかに。気付かなかった。気付かないフリをしていた。隆弘はちゃんと言ってくれていたじゃないか。すべてを抱えて飛べと。悲しいことに遭遇しても、飛べと。あのとき、きっと鳴らされたんだ。それはすごく小さく、些細な音かもしれない。けれど間違いなく、鳴った。
そのとき、何かの音がした。もちろん、ピストルなんかの音じゃない。もっと人工的で、デジタルな音。『Saturday in the park』が鳴っている。
僕は急いで音のする方を弄る。けれど、見つからない。僕は起き上がり、非常ライトをつけて、助手席の方を見た。けれど、そこには音はすれども姿はなかった。僕は運転席と助手席の間に手を入れる。そこに、携帯はあった。
僕はディスプレイも確認せず急いで電話を取った。
「もしもし」
「もしもし。足立か?」
「お前が電話してきたんだろう」
声の主は村岡だった。その声は少し慌てている様だったけれど、こいつの場合はいつものことで、特に気にも留めていなかった。
「今まで何しててん。何回も電話してんぞ」
「ちょっとね」
「お前今何処におる?」
「神目さんの家の前」
「神目さん?府議会議員のか?」
「ああ」
「何でまたそんなとこおんねん。また現場検証か?」
「別にいいだろ。要件は何だ」
「ああ、そうや。前橋がまだ帰ってきてないらしいんや」
僕はエンジンをかけて、クーラーを最大出力でかける。そしてリクライニングを倒して、天井を見る。
『ヨーイドンのピストルはまだ鳴っていない』と、神目薫は言った。でも、それは間違っている。鳴ったんだ。空一面に広がる雨雲に向かって、それは鳴らされた。隆弘が死んだとき。たしかに。気付かなかった。気付かないフリをしていた。隆弘はちゃんと言ってくれていたじゃないか。すべてを抱えて飛べと。悲しいことに遭遇しても、飛べと。あのとき、きっと鳴らされたんだ。それはすごく小さく、些細な音かもしれない。けれど間違いなく、鳴った。
そのとき、何かの音がした。もちろん、ピストルなんかの音じゃない。もっと人工的で、デジタルな音。『Saturday in the park』が鳴っている。
僕は急いで音のする方を弄る。けれど、見つからない。僕は起き上がり、非常ライトをつけて、助手席の方を見た。けれど、そこには音はすれども姿はなかった。僕は運転席と助手席の間に手を入れる。そこに、携帯はあった。
僕はディスプレイも確認せず急いで電話を取った。
「もしもし」
「もしもし。足立か?」
「お前が電話してきたんだろう」
声の主は村岡だった。その声は少し慌てている様だったけれど、こいつの場合はいつものことで、特に気にも留めていなかった。
「今まで何しててん。何回も電話してんぞ」
「ちょっとね」
「お前今何処におる?」
「神目さんの家の前」
「神目さん?府議会議員のか?」
「ああ」
「何でまたそんなとこおんねん。また現場検証か?」
「別にいいだろ。要件は何だ」
「ああ、そうや。前橋がまだ帰ってきてないらしいんや」