天体観測
「この前にみたいに、キスしてくれへんの?」
「何で?」
「そういう雰囲気やんか」
「そうか?」
「ロマンチックじゃない?」
「そうかな?」
「何億という星の下、若い二人は星の輝きに負けない……みたいなん」
「そんなの朝方にしたって、昼間したって、何億という星の下だ。見えないだけで」
「じゃあこの前のは何なんよ」
「あれは偶発的というか衝動的というか、恣意的というか……全部だな」
「それってその中の一つでも欠けてたらどうなってたん?してなかった?」
「まあ、そうなるかな」僕はあっさりと言った。
「呆れて、何も言われへんわ」
「ある種の奇跡だよ。俺の中でその三つが揃うなんて。だからさ、貴重なことなんだ。もう、この先ないかもしれない」
「そういうことって、さらりと言っていいことちゃうよ」
僕らは天井を見上げながら、こんなやり取りを続けた。お互いがお互いを意識しているけれど、相手のほうを見ることが出来ない。それはある意味儀式的だった。
「代わりになるかわからないけど」と言って、僕は恵美の手を握った。
さすがの恵美も、顔を下げて僕の方を見る。
「これが今の俺の精一杯だ」
「何で?」
「そういう雰囲気やんか」
「そうか?」
「ロマンチックじゃない?」
「そうかな?」
「何億という星の下、若い二人は星の輝きに負けない……みたいなん」
「そんなの朝方にしたって、昼間したって、何億という星の下だ。見えないだけで」
「じゃあこの前のは何なんよ」
「あれは偶発的というか衝動的というか、恣意的というか……全部だな」
「それってその中の一つでも欠けてたらどうなってたん?してなかった?」
「まあ、そうなるかな」僕はあっさりと言った。
「呆れて、何も言われへんわ」
「ある種の奇跡だよ。俺の中でその三つが揃うなんて。だからさ、貴重なことなんだ。もう、この先ないかもしれない」
「そういうことって、さらりと言っていいことちゃうよ」
僕らは天井を見上げながら、こんなやり取りを続けた。お互いがお互いを意識しているけれど、相手のほうを見ることが出来ない。それはある意味儀式的だった。
「代わりになるかわからないけど」と言って、僕は恵美の手を握った。
さすがの恵美も、顔を下げて僕の方を見る。
「これが今の俺の精一杯だ」