天体観測
外は、見ているだけで気分が悪くなってくるほど暑そうだった。蝉はかつてないほどの徒党を組み、人間に対して反旗を翻している。垣根から見える子供たちは無邪気にはしゃいでいたり、凄まじい速さで自転車を漕いでいる。どちらも、僕に夏の暑さを再確認させるだけだった。

「はい。司」

母さんが、僕の元に、よく冷えたアイスコーヒーを持ってきた。

「ありがとう」

「ところでさ、この集まりは何なの?」

「そうねえ。私にもわからないわ」

「わからないって……」

「わからないものは説明できないでしょ?」

「それはそうだけど、何らかの理由くらいなら説明できるはずだ」

「そうねえ……強いて言うなら偶然の一致よね。こういうことって」

「そう。僕はこれを飲んだら出掛けるから」

「お熱い二人だこと」

僕は恵美の方を見る。恵美はまだ、マスターと楽しそうに話し込んでいる。きっと、今日の祭りのことでも話しているのだろう。

「恵美は知らないよ。一人で行くところがあるんだ」

「じゃあ、何で恵美ちゃんは来たのよ」

「僕にもわからないよ」

「司にわからなきゃ、一体誰がわかるっていうのよ」

「本人に聞けばいいよ」

「そんなこと出来るわけないわ。私にも常識ぐらいあるもの」

「じゃあ、そういうことなんだよ。恵美には常識がないんだ」

「そうは言ってないじゃない」

「示唆してるんだよ」

「そんなことないわよ」

「そう。なら、それでいいじゃないか」

「本当に可愛くないわね。それより、司」

「何?」

母さんが舐め回すように僕を見て、言った。

「いくら自分の家だからって、服ぐらい着た方がいいわよ」
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