天体観測
男は、僕の言った意味がわかったらしく、大きく舌打ちをした。

「もう、いいでしょう」

「何が目的や」

「それは、認めた。そう思っていいんですね?」

「金か?」

「さっき冗談と言ったばかりです」

「じゃあなんなんや?」

「僕は誓って、あなたのことを口外するつもりはありません。ですので、目的なんてあってないようなものですよ。ただ……あなたが収賄に関与している。その確信がほしかっただけです」

「何のために?」

「僕の……僕らの目的のためです」

男は、握りしめていた眼鏡をかけ直した。そのレンズは、握りしめていた影響で、指紋が至る所についていた。

「そんなもんのために……こんなことしたんか?」

「そんなことじゃありません」

「ぜひ、聞いてみたいもんやな」

「それは出来ません」

「何でや?」

「質問が多すぎるからですよ」

男は、ほとんど吸っていないのに、吸いきってしまったかのようになっている煙草を灰皿でつぶして、額の汗を、掌で拭った。

「そうや。収賄はあった。まあ、落札前に捕まってもうてたけどな」
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