天体観測
「あなたはどうして、その答えに行き着いたの?ただやるべきことをやったぐらいで、そんな答えには到底行き着けないわ」

神目薫が束ねていた髪を解いて、悲しげな目で僕を見た。瞳で、僕に謝っているようだ。

「さっき、その企業に行ってきました。そして、そこの社長が収賄の事実を認めたんです」

「私が聞きたいのは、その手前よ。何故あなたが、その企業に行き着いたのか。それが聞きたいの」

「あなたの父親が第一発見者だと聞かされたとき、ピンときました。犯人が、僕の思っている通りなら……なんとしてでも事件を白昼の元にさらすわけにはいかなかった。でも、犯人にはどうすることも出来ない。だから、親が子供のためならどんなことでもやるんじゃないかと思ったんです。実際に、その人は子供のことが大好きみたいでした」

「素敵な父親ね」

「僕は、父親とは一言も言っていません」

神目薫の顔が、一瞬、しまったという表情になって、すぐさま、いつもの顔に戻った。

「あら、言ったわよ。覚えてないの?」

「僕は意識して、その言葉を避けてきました。あなたが、墓穴を掘るのを待っていた」

神目薫が僕を、きっと睨んだ。僕は頭を掻いて、言った。

「あなたが、現金を稼いでいた方法ですよ」

「あっ……」

しばらく待ったが、神目薫の方からは、口を開かなかった。

僕は、わかりきっている答えを言った。それが、彼女を追い詰めることになるとはわかっていた。

「売春は、それだけで罪の共有です」

「言わないで」

「そんなことをするほど愚かじゃない父親に、入れ知恵したのは……あなただ。父親に収賄を勧めたのは……あなただ」
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